2018年度セミナーを開催しました
11月20日(火)、宇都宮市内で2018年度セミナーを開催(共催:栃木県労働者福祉協議会)した。労福協、総研の会員団体などから96人が参加した。
「生活困窮者自立支援制度の概要と課題」をテーマに、労働者福祉中央協議会(中央労福協)の花井圭子事務局長から話をいただいた。
生活困窮者自立支援制度創設の背景として、国の社会保障審議会「生活困窮者の生活支援のあり方に関する特別部会報告書」(2013年1月)によると、年収200万円以下の勤労者は3割近くにのぼり、世帯主でも1割を超えており、17歳以下の子どもがいるひとり親世帯等の世帯員の貧困率は50%を超え、生活困窮者の増大によって国の基盤が揺らいでいることなど指摘されてきた。また失業率は、2017年が2.8%で低水準となっているが、生活保護受給者は、2005年時点で1,475,836人だったが、2017年では2,141,881人となり近年は高止まりしている状況もある。
そこで、2015年4月に施行された生活困窮者自立支援法は、生活保護に至る前の段階の自律支援策の強化を図るため、生活困窮者に対し、自立相談支援事業の実施、住居確保給付金の支給その他の支援を行うための所要の措置を講じるものであり、概要は、①自立相談支援事業の実施及び住居確保給付金の支給、②就労準備支援事業、一時生活支援事業及び家計相談支援事業等の実施(任意事業)、③都道府県知事等による就労訓練事業(いわゆる「中間的就労」)の認定、などである。なお、生活困窮者自立支援の対象となる生活困窮者とは、「現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれがある者」とある。主に、福祉事務所来訪者のうち生活保護に至らない者(約30万人・H29)、ホームレス(0.6万人・H29)、経済・生活問題を原因とする自殺者(0.4万人・H28)、離職期間1年以上の長期失業者(約76万人・H28)、ひきこもり状態にある人(18万人・H28)、スクール・ソーシャル・ワーカーが支援している子ども(6万人・H27)、また税や各種料金の滞納者、多重債務者等である。
平成29年度、任意事業を実施する自治体は増加傾向にある。就労準備支援事業の実施自治体は393自治体(H28・353自治体)、一時生活支援事業は256自治体(同・229自治体)、家計相談支援事業は362自治体(同・302自治体)、子ども学習支援事業は504自治体(同・417自治体)で全ての事業で増加。一方、実施していない自治体の課題としては、例えば就労準備支援事業において、実施しない理由は、利用ニーズがあるとしながらも事業化できない・しないとする自治体が約半数、また、支援事業を利用すべき者が利用しなかった理由として、本人が希望しない(参加のための経済的負担ができない)、資産要件を満たさない、利用期間(1年)を超えた利用が想定されることなどがあげられている。
実態からは、就労準備支援事業による効果も表れている。様々な状態像の方が利用され、就労体験等の実践を重視したオーダーメイドの支援メニューを徐々に充実させながら支援している、着実にステップアップにつなげていること等がわかっている。また、家計相談支援事業の効果では、9割超の自治体が「債務・滞納の解消に役立った」ことを挙げており、特に、自治体が有する債権については、家計相談支援事業の利用による滞納の解消を金額ベースで把握することも可能であり、効果の「見える化」が期待できるとされる。
(以下、詳報は2019年2月発行の総研レポートをご覧ください)