2019年度第1回講演会を開催しました

2月12日(火)、宇都宮市内で2019年度第1回講演会を開催した。総研の会員団体などから約60人が参加した。

「『静かなる世界恐慌』と世界経済の今後」をテーマに、京都大学大学院准教授の柴山桂太(しばやま・けいた)氏から話をいただいた。

柴山氏は、米国トランプ大統領の政策について保護主義の復活と指摘。トランプ大統領は自分の支持層に受ける政策を必ず実行してくるとして、銅・アルミニウムの関税引き上げにとどまらず、自動車関税の引き上げを行い、経済のグローバル化とは逆に、関税によって“国境線”を復活させようとしている。自由貿易、WTOを無視してくる。さらに、中国も、一帯一路による自分たちに都合の良い貿易圏をつくろうとしている。米中の狭間に立たされる日本企業は海外で経営するリスクが高まり、難しい立場になってくるだろう。

こうした各国の背景には、先進国と言われる地域で、地方の反乱がおきている。この20~30年で地方都市が衰退し、若者が大都市に出ていく中で、政治への不満が高まってきたことに原因がある。フランスの黄色いベスト運動も、はじめは地方の中高年層が始めた運動だが、やがてフランス全土を巻き込んだデモ活動に発展した。「都市に対する地方の運動」と言われている。またイタリアでも同様のことが起きており、欧州主要国の足並みがそろわなくなってきている。

アメリカ・ヨーロッパでは、政治を左か右かで分けることは意味がなくなってきており、21世紀の政治は、革新系か保守系かというよりも、国を開いて世界経済の統合をすすめることに国の未来をかけるのか、国を一定程度閉ざして、国内の支持を優先するのか、そういう対立の方が激しくなっているのが現状だ。

「21世紀の資本」を書いたピケティが、“なぜ左派は選挙に負け続けるのか”という論文を書いた。それによると右派は“反移民”や”EUに奪われた主権回復”といった明確な軸があるが、左派は明確な軸を示せていないことが原因という。さらに、左派がインテリ化し、民衆とのかい離が生まれている。

日本では、今のところほとんどの政党がグローバル化に賛成の立場だ。TPPや”移民”の受け入れ枠拡大に関しても、やり方については反対があるものの、基本的には国を開いていくという方向には賛成している。(ただし共産党だけは反対している。学生に聞くと「共産党って保守ですよね」なんて答える。)日本では、右派の中からも、左派の中からも、グローバル化の現状に対して反対という声があがってこない。

ただし、こういった状況は、日本でも長く続かないだろう。日本においても地方が反乱を起こす状況は整っている…

 

【以下詳報は、2019年5月発行予定の連合栃木総研レポートNo121を参照されたい】