2019年度第2回講演会を開催しました
8月22日(木)、宇都宮市内で2019年度第2回講演会を開催した。総研の会員団体などから約70人が参加した。
「民法改正!生活への影響を考える」と題して、弁護士の増子孝徳(ましこ・たかのり)氏を講師にお招きした。
民法には契約等に関する最も基本的なルールが定められており、この部分は「債権法」などと呼ばれている。1896年(明治29年)の制定から約120年間にわたり、見直しがほとんど行われてこなかったが、2017年(平成29年)5月に法改正が行われた。2020年4月1日施行となる。増子氏からは法改正によって生活に影響が予想されるポイントを中心に話を伺った。
まず、挙げたのは「保証人の保護」のとして「極度額の定めのない個人の根保証契約は無効になる」こと。根保証契約とは、一定の範囲に属する不特定の債務について保障契約をいう。個人が根保証契約を締結する場合には、保証人が支払いの責任を負う金額の上限となる「極度額」を定めなければ、保証契約が無効になるというものだ。つぎに、公証人による保証意思確認の手続きが新設されたこと。これは個人が事業用の融資の保証人になろうとするケースだ。この場合、保証人になろうとする者が、保証契約をする前に、原則として公証役場に出向き、保証意思確認の手続き(保証意思宣明公正証書の作成の嘱託)を経なければならなくなる。この手続きを経ずに締結した保障契約は無効となるというものである。
現代社会では、不特定多数の顧客を相手方として取引を行う事業者などが予め詳細な契約条項を約款(定型約款)として定めておき、この約款に基づいて契約を締結することが少なくない。例えば、インターネットを利用した取引、電車・バスなどの乗車に関する取引、保険や預貯金に関する取引などだ。これまで民法には約款を用いた取引に関する基本的なルールが定められていなかったが、今回に改正によって、新たに、定型約款に関するルールが新設された。定型約款が契約内容となるための要件として、①当事者の間で定型約款を契約の内容とする旨の合意をする、又は②取引を行う際に定型約款を契約の内容とする旨を顧客に「表示」しておく。この要件を充たせば、顧客がどのような条項が含まれるのか知らなくても、個別の条項について合意したものとみなされるが、信義則に反して顧客の利益を一方的に害する不当な条項は①や②を充たす場合でも契約内容とはならない。
事件や事故によって発生する損害賠償請求権に関するルールの変更も行われた。権利を行使することができる期間の見直しである。民法ではこれまで、消滅時効期間は原則10年であるとしつつ、例外的に、職業別のより短期の消滅時効期間(弁護士報酬は2年、医師の診療報酬は3年など)を設けていた。改正法では、消滅時効期間について、職業別の短期ショ梅津事項の特例を廃止するとともに、消滅時効期間を原則として5年とするなどとしている。
さらに、生命・身体の侵害による損害賠償請求の時効期間を長期化する特則が新設された…
(以下、詳報は10月発行予定の連合栃木総研レポートを参照されたい)